食物繊維は、便秘解消の切り札、お通じは健康のバロメーター

ミルク煮3

糖尿病の予防と治療に数々の効用を示す食物繊維


                                               

 糖尿病の治療では食事療法は非常に重要な位置を占めています。その食事
療法をうまく進めていくうえで、最近注目されているのが食物繊維の役割です。
さらに最近の研究では、糖尿病の発症や進行に、食物繊維の不足が関係してい
るといわれ、糖尿病のコントロールのために食物繊維がとても重要なことがわ
かってきました。この本題にはいる前に、まず糖尿病について説明しておきま
しょう。




患者数およそ200万人、ふえる一方の糖尿病



 文明病といわれる糖尿病は、わが国でも増加の一途をたどっています。厚生
省が行っている国民健康調査によると、わが国の糖尿病有率は、1962年には人
口1000人に対して約0.5人でした。ところが、1985年には人口1000人に対して
約6人と、約12倍にまでふえているのです。そして現在め患者数は、およそ200
万人を超えているといわれています。今や、いつだれがかかっても不思議でな
い病気の一つと言っていいでしょう。




膵臓から分泌されるインスリンというホルモンの働きが不足して起こる病気
です。インスリンは、血液中に含まれるブドウ糖(グリコール)が、体のさま
ざまな場所で燃えるのを助けると同時に、脂肪などとして体内に蓄えられるの
を助けます。ですから、インスリンが不足するとブドウ糖の燃焼が悪くなった
り、脂肪への転換がうまくいかなくなります。当然、血液中のブドウ糖は増加
し、血糖値が高くなるということになります。結局、糖尿病はインスリンが不
足状態になっていて血液中にブドウ糖がだぶついていることなのです。




糖尿病は、軽いうちはほとんど自覚症状がありません。しかし症状が進む
につれて、体がだるい、尿の量と回数がふえる、のどが渇く、多食になるといっ
た症状があらわれてきます。
さらに、糖尿病がこわいのは、さまざまな合併症を引き起こすことです。代表
的な合併症としては、糠尿病性網膜症、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症など
があります。このほか、糖尿病の人は、脳卒中や心筋梗塞などの原因となる動
脈硬化が、一般の人にくらべ早い時期に、かつ強く起こるといわれています。




糖尿病になってしまうと現代の医学では、ごく少数の例外を除いて根治するこ
とはできまん。一度発病したら、一生涯つきあわなければならない病気なので
す。しかし、だからといって、糖尿病にかかった人の前途はまっ暗かというと、
そんなことはけっしてありせん。正しい治療をつづけていれば、健康な人とほ
ぼ同様な充実した生活を送ることができるのです。そこで非常にたいせつにな
ってくるのが食事療法なのです。




食事療法の基本は、なんといっても摂取カロリーの制限です。食後に分泌さ
れるインスリン量は、食事の栄養素の種類よりもそのエネルギー量に左右され
ます。ですから、一日の摂取エネルギ一量を必要最小限度にとどめれば、イン
スリン分泌量の節約となり、インスリンの不足を解消して高血糖をはじめとす
る糖尿病の改善に役立つというわけです。冒頭でも述べたように、このような
食事療法をうまくやっていくうえで、食物繊維がたいせつな役割を果たしてく
れるのです。






血糖の上昇を防ぐほか、数々のすばらしい効用が



では、食物繊維はどのようにして糖尿病を予防したり、糖尿病の食事療法を
より効果的にするのでしょうか。端的にいえば、食物繊維は高血糖を予防する
からです。食物繊維が少なく、糖質の多い食事は、食後、急激に血糖値を上昇
させ、高血糖をまねきやすいという問題があります。高血糖ではインスリンの
助けをより多く必要とします。すると、膵臓はどんどんインスリンを生産する
ことを強制され、酷使されます。このような無理がつづくと膵臓は疲れ果てて
、ついには十分にインスリンを作ることができなくなり、結局インスリン不足
の状態になります。




ところが、食物繊維たっぷりの食事であれば、食物繊維が糖質の消化と吸収
をうまくコントロールしてくれて、高血糖を予防してくれるのです。
 さらに食物繊維は、高血糖と高インスリン血症の悪循環を改善してくれます
。高インスリン血症とは、高血糖の際にインスリン分泌が過剰になって血液中
のインスリン濃度が高くなってしまう状態です。こうなると、筋肉組織や脂肪
組織でのインスリンの作用が低下し、ますます血液中のブドウ糖をうまく処理
できなくなってしまいます。食物繊維は、この悪循環を改善してくれるのです
。では、どのようにしてこのような悪循環を改善するのでしょうか。




上の図を見てください。これは私どもが行ったラットを使った実験の結果で
す。@のブドウ糖だけを与えたグループより、Aのブドウ糖+コンニャクマン
ナン (食物繊維の一種)を与えたグループのほうが、胃の中にとどまってい
るブドウ糖の量が多く、胃の中にとどまっている時間も長いことがわかります
。これは、食物繊維があると、胃がその内容物を小腸へ送り出すスピードがゆ
るやかになるからだと考えられます。つまり、食物が胃から出ていく時間がお
くれれば、それだけ上部小腸での栄養素の吸収がおくれます。その結果、食後
の血糖値の上昇は抑制されることになり、高血糖が抑えられ、最終的に高血糖
ーー高インスリン血症の悪循環が改善されるわけです。




 また、栄養素の吸収にたずさわる腸の細胞の表面にはねばねばしたものがお
おっでいて、腸の細胞を保護したり、消化物が腸の中を通りすぎるときに潤滑
剤として働いています。食物繊維、特にペクチン、グアーガムなどの水溶性食
物繊維はこのねばねばを厚くさせます。それのみならず、腸内に入った食物の
移動をゆっくりさせるため、栄養素の吸収もゆっくりとなります。その結果、
急激な血糖値の上昇は抑制され、やはり結果的に高血糖が抑えられるわけです




 以上のことから、食物繊維は食物の消化、吸収をコントロールすることによ
り糖尿病を予防することがおわかりになったかと思います。しかも、食物繊維
は栄養素の吸収をゆっくりと少しずつさせるので、インスリン分泌量がたとえ
不足していたとしても、吸収されたブドウ糖を処理することができ、糖尿病の
改善に役立ちます。食物繊維が糖尿病の食事療法をより効果的にするのはこの
点なのです。




このほか、食物繊維の糖尿病に対する効用として、消化管ホルモンに対する
作用も見のがせません。GIP、GLIといった消化管ホルモンは、インスリンの分
泌を促進します。これら2つの消化管ホルモンは、実は、食物繊維をとったほ
うがその分泌が抑えられるのです。




 このように、食物繊維の持っている糖尿病予防の働きや改善作用は、食物繊
維のいろいろな働きが重なり合って効果をあげているものと思われます。恐ろ
しい脳卒中や心筋梗塞の原因にもなりかねない糖尿病を撃退するためにも、食
物繊維の豊富な食生活を送っていただきたいものです。






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